日本航空株式の譲渡損失

日本航空株主の権利消滅
 日本航空の平成22年1月19日更生手続開始申立てに伴い、その株式は上場廃止までの期間「整理ポスト」に入り、2月19日で売買最終日となり、2月20日に上場廃止となりました。その後100%減資が行われ、発行済み株式の全てを会社が無償で取得し、消却しましたので、それまでの全株主は株主でなくなりました。

今次の申告で対処
 日本航空株が上場廃止により証券会社の特定口座から「特定管理口座」(上場廃止後の株式を保管する口座)に移管され、「特定管理口座」において100%減資が実施される時点まで継続して保管がなされていた場合には、証券会社から顧客に対して「価値喪失株式に係る証明書」が交付されます。その証明書を100%減資がなされた平成22年分の確定所得申告書に添付した場合には、価値喪失株式の取得価額相当額を譲渡損とみなし、他の株式等の譲渡益と相殺することができる特例制度が使えます。

みなし譲渡損と上場株譲渡損との相違
  上場株式の譲渡損失については、配当所得との損益通算及び損失の3年間の繰越控除の適用があります。しかし、価値喪失株式のみなし譲渡損にはこの規定の適用はありません。

  理由は、特定管理口座株式は、すでに上場廃止となった株式なので、非上場株式に分類され、そして、生じたとみなされた譲渡と損失は、非上場株式の譲渡により生じた損失ということになるからです。

「整理ポスト」で売買の場合
 日本航空株は、整理ポストに入って1円、2円の株価になったところで、1日10億株を超える取引があり、盛んな売買が行われました。整理ポスト株式はまだ上場株式です。この時期に1円で売却した株主の場合には、上場株式の譲渡損なので、配当所得との損益通算及び損失の3年間の繰越控除の適用があります。

 現実の譲渡損とみなし譲渡損との金額差は一株当たり1円に過ぎませんが、税の扱いは全く異なることになりました。

 もっとも、上場廃止になっても100パーセント減資になるかどうかはわかりませんし、上場廃止後も株主優待はもらえるかもしれないので、このあたりの判断は難しいところです。