源泉徴収はともかくとして、年末調整は世界で日本だけにしかない制度だ、という神話があります。その神話について、ちょっと調べてみました。
各種年末調整の制度がある国ない国
ドイツでは、12月31日に10人以上を雇用している雇用主に対して、賃金税(給与所得者にかかる所得税に相当)の年末調整義務を定めています。処理の期限は翌年3月末日です。ただし、被用者が希望しない場合は直接税務署に申告します。
欧州大陸では、その他にノルウェーとポルトガルにも年末調整制度があります。
イギリスでは、年末調整というよりもその都度調整というべき制度(PAYE)により、給与の各支払い時にそれまでの支払額の累計額に対して、人的控除などにも配慮した税額表を基に、給与所得の年税額に帳尻が合う形で源泉徴収を行うので、大部分の給与所得者は申告の必要がないことになっています。
イギリス型のPAYEは植民地を含む旧英連邦の国々で多く採用されています。
韓国にも年末調整制度がありますが、時期は年末ではなく、3月に行われ、また日本なら確定申告ですべきことも悉く年末調整で完了させることになっているので、完全進化型と言うべきものかもしれません。
アメリカ、フランス、イタリアなどその他の多くの国では源泉徴収はするものの年末調整の制度は持っていません。また、給与については源泉徴収するだけで税額が確定することになっている国も二つ三つあります。
源泉徴収と年末調整の起源
源泉徴収制の起源をひもとくとイギリスが1799年にナポレオン戦争の戦費調達のために貴族階級を課税対象に創設した所得税の徴収に始まり、所得税と源泉徴収はその後廃止されたのち1803年に給与所得、利子配当所得などに対する制度として復活し、現在に至っています。
ただし、広く国民大衆を相手にする源泉徴収制度を制度として機能させたのはナチスドイツで、ナチスドイツは税制に対してはかなり先進的で、扶養控除や住宅促進税制など、第二次世界大戦後多くの先進諸国に影響を与えた制度を考案していました。
源泉徴収も年末調整も日本の発明ではありません。日本だけの孤独な制度というのはやはり神話のようです。