2010年相続税ゼロは、アメリカ合衆国の連邦遺産税の話です。これは事実で、アメリカ合衆国では、どんな大金持ちでも2010年に亡くなった人には連邦遺産税(遺産税)は課されません。
この遺産税廃止は、前政権ブッシュJrの時代に立法化されましたが、この法律が日本でいうところの「時限立法」だったことから、本年限りでその効力は失い、2011年から遺産税は復活し,現段階では2001年以前の規定に戻る予定です。
遺産税の特徴
遺産税は日本の相続税にあたるものですが、日本の相続税のように遺産を取得した者が相続税を納めるというのではなく、遺産そのものを対象に課税しますので、相続人の数や遺産分割の内容によって税負担が影響を受けるということはありません。
実際には、故人に代って遺産財団が組まれ、遺産管理人又は遺言執行者が納税をも含めた相続業務を遂行します。申告期限は、原則、亡くなった日から9ヶ月以内です。
相続により取得した遺産の取得価額
遺産の取得価額は、原則、被相続人の死亡日における当該資産の公正な市場価額、つまり相続開始日の時価です。この時価引継をステップアップ方式と言っています。この場合、相続開始後、期間を置かず取得した遺産を譲渡してもキャピタル・ゲイン課税(含み益課税)は生じません。
しかし、遺産税廃止年度に限って、キャリーオーバー方式と言って、被相続人の取得価額を引継ぐことになっています。この場合、遺産の譲渡に際して、一般的には、キャピタル・ゲイン課税が生じます。
この取得価額の引継ですが、厳密には、被相続人の取得価額と死亡時の時価とのいずれか低い方になりますが、一定の要件を満たす場合には、加算調整が行われ、被相続人の取得価額に一定額(130万ドル、配偶者300万ドル)の加算が行われます。
遺産税と所得税の二重課税
年金二重課税禁止の最高裁判決で話題になっている「相続税」と「所得税」の二重課税の問題ですが、この二重課税の範囲をどこまでとするかは別として、我が国のような相続により取得した財産に相続税を課し、その後の譲渡で所得税を課する税制とは異なり、少なくとも、アメリカ合衆国の場合は、上記のように、「遺産税」と「所得税」の二重課税は排除されています。